二日目

今日は釧路から霧多布を経て、根室に行く予定だ。この周辺はシカの飛び出しが多いので、慎重に運転をしなければならない。案の定、厚岸に向かって国道44号線を走っていると、程なく道沿いにシカ防護柵が見られるようになった。しかし、後で土産物店のおばちゃんから聞いた話だが、この防護柵は逆効果になるという。というのも、防護柵と防護柵との間には隙間があり、そこからシカが道路に出てしまうと、どうにもならないのとだ。一旦、防護柵から出てしまったシカは、その隙間から山の中に戻ることは出来ない。その結果、道路に出てしまい、事故となるらしい。
やがて、厚岸が見え、厚岸大橋を渡り、まず向かったのが、国泰寺跡だ。そこに厚岸町郷土館というものがあったので、早速入館してみた。


次に向かったのは、愛冠岬だ。鐘を鳴らすと、愛が実という「愛の鐘ベルアーチ」が有名だ。
そして、愛冠岬へ向かう山道沿いで、今回の旅行で初めてシカを見た。四、五頭はいるだろうか。僕がシカを見やると、シカも僕を見た。何となく人間に慣れてるようなシカだ。道に出て来るような気配は見られなかった。
愛冠岬の大きな駐車場に車を停めると、早速愛冠岬に向かって歩き出した。駐車場から少し歩かなければならないようだ。
林の中を歩き続けると、やがて、大きな広場のような場所に出た。その先が愛冠岬だ。しかし、随分と霧が掛かり、視界が悪い。この広場ではシカが十頭以上も見られ、辺りを駆け回っていた。僕が歩き出すと、忽ち遠くの方へと移動してしまった。


愛冠岬の向こうは断崖絶壁なのだが、何も見えない。それと、今、辺りには僕一人しかいないこともあって、辺りは一層不気味な感じだ。こんな場所にクマが出れば。それで終わりだろう。
そう思うと、速足で駐車場に戻った。
愛冠岬の次は、あやめが原、琵琶瀬展望台を経て、霧多布岬へと行くつもりだ。
愛冠岬の駐車場を後にして1分程経った頃、大型観光バスが次から次へとやって来た。小学生を乗せているようだ。
早目に行動をとってよかったと思う。やはり、ああいった場所は物静かな方が似合う。
愛冠岬を後にし、海岸沿いの道を走ってるのだろうが、海は霧が掛かり、何も見えない。また、この辺もシカが多いようで、道路ではシカ飛び出し注意を呼び掛けている。慎重に運転しなければならないというものだ。
やがて、あやめが原の大きな駐車場に着いた。しかし、僕以外誰もいないようだ。
そう思っていたが、駐車場に観光サービスセンターがあり、そこに何と係員のおじさんがいた。それで、「辺りにヒグマは出ないかのか?」と訊いてみたところ、「大丈夫です」と、返答してもらった。
それで、散策路を歩こうと思ったのだが、あやめの季節にはまだ早い。辺りを見回しても、花らしきものは殆ど見られず、霧が掛かっていて視界が悪かったので、早々と後にした。

あやめが原の次は琵琶瀬展望台だが、途中、涙岩へ行く駐車場があったので、停まってみた。涙岩へは、ここからかなり歩かなければならないようだ。辺りは霧が掛かり、視界は悪い。とても、行けるような雰囲気ではなく、僕以外の車は1台も停まっていない。ただ、貴重品を車の中に置かないようにと注意を促す立て看板があった。車のガラスを割り、貴重品を盗む泥棒がいるのだろう。こういった注意を促すか立て看板は、石垣島でも度々目にした。
駐車場を後にし、しばらく走り続けると、やがて、琵琶瀬展望台に着いた。しかし、霧が掛かり、視界はすこぶる悪い。本来なら、左側に霧多布湿原の光景を目に出来る筈なのだが、霧が掛かり、殆ど見えないという状況だ。



本来なら、この場所から、霧多布湿原や海が見える筈なのだが、全くといっていい位見えなかった。それと、風が強く、また、とても寒い。それで、土産物店があったので、早速中に入ってみる。
すると、なかなかの品揃えだ。それで、色々見ていると、主のおばちゃんがこんぶを「どうぞ」と言って食べさせてくれた。すると、海の香りがして、とても美味しかった。それは「だし昆布」という代物で、だしにも使えるし、また、そのまま食べても美味しい。気に入ってしまい、だし昆布とか、その他の昆布などを宅配便で送ってもらうことにした。すると、ソフトクリームをプレゼントしてくれた。また、ここの自家製ソースもとても美味しい。「商品化したらどうですか」と言ってみたら、「それ程でも…」という風に謙遜されたようだ。因みに、ここの商品は電話注文のみでインターネットでは注文できない。家に戻ってから、この店に再び注文したのだが、その場合は現金書留となるので、購入量にもよるが、僕の場合、配達料等が2000円程掛かってしまった。しかし、何度も注文する客も多いようだ。
琵琶瀬展望台を後にすると、次は、霧多布岬だ。当初の計画では、MGロードという湿原の中の道を走り、湿原センターに行くつもりだっのだが、この霧ではそんな気にならない。それで、湿原の中に入る道は走らなかったのだが、今思えば、湿原センターだけは行けばよかったと後悔している。
霧多布岬へは、信号を右折しなければならず、少し迷ってしまったが、何とか着いた。しかし、名前の通り、確かに霧が多い場所だ。


霧多布岬手前にキャンプ場があったので、寄ってみることにした。
キャンプ場といっても、バンガローがあるだけなのだが、この気候では無論誰もいないと思っていたが、管理人がいたのには驚いた。

霧多布キャンプ場


霧多布キャンプ場を後にすると、海沿いの道をそのまま進み根室まで行こうと思っていたのだが、霧が多く、見晴らしが悪い。また、ムツゴロウ動物王園も閉鎖されてるという。これでは、車の速度も出せない。また、ムツゴロウ動物王園も閉鎖されてるという。それで、123号線をそのまま走り、JR根室本線を通り過ぎ、根釧国道に出て根室に向かった。根釧国道はまるで霧は見られず、見晴らしがよかった。辺りには小さな黄色の花が咲き乱れてる原生花園が至る所に見られた。あれは、何という花だろうか。
この道をこのまま走り続ければ、根室に着くのだがその前に落石岬に行こうと思い、カーナビの指示通り、車を走らせた。そして、やがて、落石岬近くに着いたのだが、ここから灯台まではかなり歩かなければならない。それに、霧が掛かり、視界がとても悪い。それで、早々とこの場を後にし、次は花咲港に向かった。

花咲港に来るのは、二回目だ。もっとも、前回は根室からバスで来たのだが、それ故、花咲港周辺の景色は何となく覚えていた。


花咲港を少し見物した後、車石に行こうと思ったのだが、標識なんかを見付けることが出来なかったので、近くを歩いてる人に訊いてみたのだが、「分からない」と言われてしまった。それで、やむを得ず、引き返したのだが、後でそのまま真っ直ぐ進めばよかったということが分かった。<何て自分は馬鹿なのだろうか>と思ってしまった。
花咲港の次は納沙布岬だ。納沙布岬を訪れるのも、二度目だが、前回は根室からバスで来た。
納沙布岬は今、10度以下らしい。今回の旅行ではまだセーターを着る必要はなかったが、納沙布岬では必要かもしれない。
花咲港から一旦根室市内に入り、それから納沙布岬に向かうのだが、行きは太平洋沿いの道を走ることにした。
前回来た時は、納沙布岬に近付くに連れて霧が見られたが、今回は霧は見られず、納沙布岬に着いた。そして、前回行かなかった灯台の近くに車を停めた。そして、車外に出たが、確かに寒い。また、風がとても冷たい。それで、車の中でセーターを着た。やはり、持ってきてよかった。


とにかく寒い。また、霧が濃い。それで、3キロ程先にあるという貝殻島は全く見えなかった。また、辺りには観光客らしき人は、僕を入れて二人程であった。以前は24時間年中、火が灯っていたという「祈りの火」を見た後、早々と車に戻った。これ程、寒くては早く車に戻りたいというものだ。

短編小説 根室半島殺人事件


納沙布岬を後にすると、後は根室市内に戻るだけだ。因みに、平和の塔は営業してないようだ。
帰りは、行きとは違って、根室湾沿いに車を走らせる。途中、北方原生花園という見所があるので、車を停めた
しかし、この寒さと霧の為に、駐車場は僕の車1台だけだ。また、まだ花の季節ではない為に、原生花園には花は見られなかった。しかし、ポニーが走り回っていて、北海道らしい光景だと思った。



寒風が吹き付ける北方原生花園を後にすると、後は宿泊先の根室グランドホテルに行くだけだ。そして、思っていたよりも、かなり早くホテルに着いてしまった。これでは、霧多布湿原でもう少し少し時間を掛ければよかったと改めて後悔した。


戻る